2006.09.18

A Summer to Remember

A Summer to Remember (Get Connected Romances)A Summer to Remember (Get Connected Romances)
Mary Balogh

Dell Pub Co 2003-03-04
売り上げランキング : 13797

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奔放な独身生活を謳歌していた不良貴族Kitは、家族からの圧力で望まぬ相手と婚約させられそうになる。かくなる上は大至急で、誰もが認める相手を婚約者として見繕わなければ。そんなKitが白羽の矢を立てたのがLaurenだった。不良貴族のKitなど相手にするはずもない完璧な貴婦人Laurenと、たった二週間で婚約にこぎつけてみせよう、とKitは友人たちと賭けをする。
一年前、結婚式の日に相手に捨てられるという大スキャンダルに見舞われていたLauren。貴婦人として恥ずかしくないように、と真面目に生きてきたこれまでの人生は間違っていたのだろうか、と疑問を抱いていたところへのKitの求愛。危険な相手だと周囲に反対されればされるほど、LaurenはKitに接近してゆく。
はじめはゲームを楽しんでいたKitだが、やがてLaurenをひとりの女性として見るようになると、賭けの対象としていることが恥ずかしくなり、結局すべてをLaurenに告白。愛されていた訳ではなかったと傷つきつつ、Kitの事情を知ったLaurenはある提案をする。ひと夏だけ、ふたりで婚約を装って、夏が終わった時点でLaurenから婚約を破棄しよう。そうすれば、Kitは望まぬ相手との婚約を回避できるし、Laurenもオールドミスとして静かな生活を手に入れることができる。そのかわり、思い出になる夏を経験させてほしい、と。

最初は"The Secret Pearl"とは随分違った、やけにあっけらかんと明るいトーンにビックリ。いろんなスタイルで書く人なのかなぁと思っていたら、ジワジワと色々な影が書き足され、しっとりと味わい深いロマンスに変貌しました。その変貌ぶりがホント自然でさりげないのと、重苦しくならずに深みを増すのが良い。Kitと弟Sydの確執なんてかなりヘビーだと思うのだけれど、どこか幻想的ですらあったり。なんでかな?
とにかく主人公二人がいいです。賢さと純粋さを兼ね備えたLauren、奔放でありながらも根は誠実なKit。この二人の魅力に尽きるんじゃないかな。KitのリードでLaurenが女性として花開いていく様子が痛快なんだけれど、そこはかとなくひと夏限定という切なさがあってグッときます。ツクツクボーシの声を聞く切なさが通奏低音になってるとでもいいましょうか、いや、なんとも情緒があります。絵になるシーンも多いし、素敵な映画をみたような読後感(2時間の映画には絶対収まらないけどね)。シリーズの一部らしく、脇役がやけに丁寧に描かれているので面食らいますが、コレだけ読んでも充分楽しめました。おすすめ。2006.9.10★★★★★

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2006.08.15

True Confessions

True Confessions (Avon Romance)True Confessions (Avon Romance)
Rachel Gibson

Avon Books (Mm) 2001-07-31
売り上げランキング : 64691

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仕事上のトラブルをきっかけにスランプに陥ったタブロイド紙ライターのHopeは、会社の勧めで半年間の予定で田舎町Gospelに暮らすことに。元亭主の裏切りでバツイチになってから知らず知らずのうちに他人に心を閉ざしていたHopeだったが、Gospelでは心許せる友人も見つけ、いままでになかったほど幸せを感じていた。でもひょっとすると、その幸福感には地元の保安官Dylanの存在が関係しているのかも・・・。Dylanは男手ひとつで男の子を育てるパパ。息子との平和な生活を守るためにも、母親の正体は絶対に秘密だ。Hopeと親しくなるDylanだが、彼女にも息子の母親については嘘をついている。Hope自身も自分の過去や職業についてはDylanに嘘をついたまま。お互いに秘密を抱えたままふたりは恋におちてゆくが、やがてショッキングな形で真実があきらかに。一度うしなわれた信頼はとりもどすことができるのか?

コレ、むっちゃ好き! 最初から最後まで文句なしで良かった。嬉しくなっちゃいます。
とにかくDylanが最高。息子に対してはよき父。街の女性に対しては心優しいフェミニスト。そしてHopeの前では危険なセクシーカウボーイ(きゃーっ)。ハレンチな口説き文句から心揺さぶる愛の告白までなにを言ってもサマになる。いやもう、出来すぎ出来すぎ素敵すぎ。おまけにHopeに対する惚れっぷりがまたツボです。
このヒーローだけでも充分五つ星なんですが(我ながらすごい評価基準だ)、ふたりのロマンスがまたいい。恋に落ちてゆく不安とヨロコビが見事にセキララに綴られていて、もう胸がキュンキュン言いっぱなし。愛し合えたときの幸福感とか、裏切られた絶望感とか、とにかく真に迫るものがありました。ドラマチックさも申し分なし。
でも、なんといっても一番凄かったのは、空気感かもしれない。お隣さんとの交流とか、のどかな田舎の日常とか、この変テコなGospelという町にHopeが見出した安らぎがすごくよく伝わってくる。それがあるからこそ、どっぷり物語りに浸ることができたのかな? おまけにGospelの住民たちの奇妙奇天烈ぶりもRachel Gibson節炸裂って感じだし。とにかく最高でした。彼女の作品のなかでもマイベストです。2006.8.14★★★★★

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2006.07.15

The Secret Pearl

The Secret PearlThe Secret Pearl
Mary Balogh

Dell Pub Co 2005-11-29
売り上げランキング : 10296

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殺人の罪を着せられそうになり、着のみ着のままロンドンに逃げてきたFleur。所持金も底をつき、もう二日間何も食べていない。とうとうFleurは生きるために身体を売ることを決心する。初めてのお客は顔と身体に傷をもつ紳士。食事を奢ってもらい、気前良く要求の三倍の代金を支払ってはくれたものの、優しさのかけらもない彼の行為にFleurは身も心も傷つく。やがて、その金すら使い果たし、再び客をとる覚悟で街に出てきたFleurは、思いがけず家庭教師の職を得ることに。あと数日早くこの仕事を得ていれば、穢れた身体にならずにすんだものを、と運命を呪いつつ、Fleurは新しい職場Willoughby Hallへと向かう。女主人と乳母に冷たくあしらわれ、甘やかされて育った5歳の生徒に手をやきつつも、Fleurは自分の生きる場所をWilloughbyに見出していく。やがて、ずっと不在だった家の主がロンドンから戻ってくる。主人の顔をみたFleurはショックをうける。なんと、あのときの男ではないか。

うひょ~! というのが最初の10ページを読んだときの感想。ひさびさにガツンとやられました。
少女が身体を売るというショッキングなシーンを、センセーショナルに走らずに、抑制されたトーンで俯瞰的に綴っていく。それでいて、そのシーンだけでFluerというキャラクターがわかってしまうという。うわぁ~凄いなコレ、とワクワクしました。しかも、その時の冷酷な客がヒーローで、しかも妻子持ちと知ったときの興奮。どうするねん、どうやって落とし前つけるねん、と。いや、だって、読者の多くが主婦であるロマンス業界において、ヒーローの不倫はご法度でしょう? しかも子供持ちですよ? どうやって落とし前ついたかは読んでみてのお楽しみ。
なにしろ上手いですね。Fleurの過去がチラチラ、公爵家の秘密がチラチラと、いろいろ含みを持たせたもままストーリーが進行するのですが、流れがまったくもたつかないのは立派。ロマンチックサスペンスとか、結構イライラしてしまうことの多い堪え性のないわたしでも楽しく読めました。勢いにまかせない緻密な構成が伺えます。ヒストリカルにつきもののいわゆるbig wordsがほとんど使われていないのに、ちゃんと品の良いクラシカルな文章になっているのもお見事。まったくブレのないトーンは憎たらしいほどで、もっと筆が滑ってもいいのにと感じたほど。中盤、わたしの好みからするとあまりにコントロールされすぎているかな、とも思ったのですが、後半はばっちりアツく泣かせてくれたので5つ星です。いやもう、あの馬車で小指からめるシーンとか、ピアノフォルテを贈られたシーンとか、ノックアウトですよ。ふたりの深~い愛にトキメキました。おすすめ。2006.7.15★★★★★

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2006.06.12

The Other Boleyn Girl

The Other Boleyn GirlThe Other Boleyn Girl
Philippa Gregory

Touchstone Books 2002-06-04
売り上げランキング : 63217
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舞台は16世紀、ヘンリー8世治世下のチューダー朝宮廷。新興貴族Boleyn家の娘Maryは王妃のお気に入りの侍女として宮廷生活を送っていた。Maryの姉Anneがフランス宮廷からイギリスに帰ってくるところから物語がはじまる。当時Anne15歳、Mary14歳。ふたりのBoleyn家の娘たちは宮廷の中心となり、まずはMaryが王の寵愛を得る。既に12歳のときに結婚していたMaryだが、家族に言われるがまま夫の元を離れて王の愛人となる。敬愛する王妃への想いに引き裂かれながらも、王の愛人という立場や人々の注目を楽しんでいたMaryだが、成長とともに覚めた目で宮廷をみるようになっていく。やがて、姉のAnneが王の寵愛を奪う。ふたたび家族に言われるがまま、今度は姉の侍女として後押しにまわるMary。Anneは憑かれたように計略の限りをつくして王妃の座まで登りつめ、王とともにイギリス王家の権力を拡大してゆくが、やがて王子を産めないAnneに王の気持ちは冷め、後は1536年5月の悲劇めざして転落の一途をたどる。一方、Maryは宮廷の外に本当の幸福を見出していく。

【これはロマンスではありません】
”エンターテイメントとは共感である”という個人的定義に従って言えば、これはエンターテイメントの範疇にかろうじて収まるかね、という作品。というのも、いやもう凄いんです、この宮廷ってやつが。
王を楽しませ、王の歓心をかうことが究極の存在意義なわけで、その価値観の歪みっぷりときたらグロテスクといってもいいほど。冒頭、12歳で結婚したMaryが夫婦生活について無邪気に語るシーンで「こわっ」と思いましたが、そんなの序の口。自分の娘を嬉々として王に差し出す家族。言われるがままに王を誘惑する少女。超越した価値観が、語り部であるMaryの幼さとあいまって、共感の余地はゼロ。政治の道具としていいように使われるMaryをただポカンと口をあけ、呆然と見ているって感じでしょうか。
しかしMaryが成長してゆくと、少しずつ変わっていきます。現在とは違う価値観をもちながらも、冷静に周りを観察し、物事を深く理解してゆくMary。Maryの目を通して描かれるAnneの奮闘は、見苦しくも痛々しく、単なる悪女では片付けられない。特に男子を産まなければいけないというプレッシャーのなかで壊れてゆくさまは、ただただ悲しい。このAnneとMary(それから兄のGeorge)の関係がまたものすごいんです。愛憎半ばするなんて言葉では表しきれない、強烈な関係です。究極のライバルでありながら、最も信頼する友でもあり、心底憎みつつも見捨てられない・・・うーん、やっぱり表現できない。
やがてMaryは愛し愛されることの幸福を知り、宮廷的価値観から脱却してゆくわけですが、このあたりからようやく共感が生まれます。本当の幸せって何だろうという、比較的判りやすいところにストーリーも落ち着いてゆきます。そして、最後の100頁ほど、Anneの失脚に伴ってMaryにも危険が及ぶあたりは「うわー、どうするどうするどうする」と心臓バクバクで一気読みです。Anneはロンドン塔の幽霊(笑)になるって知ってたけど、Maryの運命は知らなかったからね。
というわけで、とくに前半は非常に共感が難しい。でも、納得はできるんです。多分それはひとりひとりのキャラクターが物凄く鮮明なのだからだと思う。王妃をとっかえひっかえしたヘンリー8世の動機ですら、異常だとは思いつつ、納得できるんです。AnneとGeorgeの常軌を逸した選択にしたって納得できるんです。それって凄いことだと思う。冷たい事実と年号の列挙であった歴史の世界が、体温を体臭をもってよみがります。華麗でグロテスクな宮廷絵巻と、パワーゲームの駒として翻弄される女の悲哀、愛しつつ憎みあう姉妹の絆、そんな濃厚な世界に浸ってみたいかたにお勧めのヒストリカル・フィクションです。2006.6.12★★★★★

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2006.05.25

Trust Me

Trust MeTrust Me
Jayne Ann Krentz

Pocket Books (Mm) 1995-09-01
売り上げランキング : 254,052
おすすめ平均

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コンピュータ・セキュリティ会社の社長 Sam Starkの結婚式の日、とうとう花嫁は現れなかった。実は新婦にすっぽかされるのは人生二度目のStark。天才肌のコンピュータおたくで感情を表に出さないStarkに、女性たちは不安を感じて逃げ出してしまうのだ。妻となる人物に苦手とする社交面を任せるつもりだったStarkだが、あてが外れたいま、ケータリング会社と契約して一切を任せるという妙案を思いつく。代々続いた演劇一家のなかで唯一の実業家Desdemonaは、売れない役者ばかりの身内を自分のケータリング会社に雇うことで一族の経済的基盤を支えている。Starkの会社から包括的な大契約を持ちかけられ、一も二もなくとびつくDesdemona。Starkの会社が主催するパーティを仕切ることはもちろんのこと、なぜか妻のかわりとしてStarkが参加するパーティに同伴することまで同意させられる。まったく正反対の性格ながらも急速に惹かれあうふたりだったが、Starkが開発しているセキュリティソフトが産業スパイに狙われ、Desdemonaまでもが危険にさらされることになる。

いつも本を読みながら心のどこかで分析している。ここが凄い、ここがイマイチ、ここが好き、ここが嫌い。レビューを書くためというのもあるかもしれないけれど、理系の性でしょうか。ところが、この作品については・・・わからない! なぜかわからないんだけれど、すごく楽しい。逆はよくあるんですよね、悪いところ見つからないのにつまらないってのは。でも、今回のようなケースははじめて。わたしの大好きなすれ違いもメロドラマもなし。ヒーローが超いい男というワケでもない。ストーリーはひょうひょうとして至極平熱なんだけれど、先を読みたくてたまらなくなる。苦手のロマンチック・サスペンスにもかかわらず5つ星です!
いいところとして唯一明らかになのはDesdemonaのキャラクター。すごく初々しいのにすごく大人なんだよね。普通だったら間違いなくすれ違いコースまっしぐらな恋愛の危機の数々を、素直に鮮やかに切り抜けてゆく様はお見事のひとこと。初めて結ばれたあと、早速おとずれたピンチでのあの切り返し方! いやー、同性ながら惚れそうです。
でも、Desdemonaのキャラクターが際立ってくる前からストーリーには引き込まれていたわけで、それだけが理由じゃないのは間違いないんですよ。なんでだ? いったいどこがいいんだろう。誰か知っていたら教えてくださいな。 2006.5.25★★★★★

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2006.03.29

Dreaming of You

Dreaming of You Dreaming of You
Lisa Kleypas

Avon Books (Mm) 1994-05
売り上げランキング : 86,828

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田舎町の小さな家で両親と慎ましく暮らすSara Fielding。四年来のお堅い恋人は一向にプロポーズする様子もなく、たまに素っ気無いキスを交わす程度。冒険や大恋愛に憧れる気持ちは秘めたまま、真面目に平凡な日々を送るSara。そんな彼女が娼婦を主人公にして書いた小説が大ヒット。次回作のための取材でロンドンの夜のスラム街をうろついていたSaraは、暴漢に襲われていた男性Derekを助ける。彼が有名なロンドン屈指の賭博場のオーナーであると知り、格好の取材材料に出合ったとばかりにSaraは大喜び。Derekの賭博場に出入りするようになる。最初は迷惑がっていたDerekもSaraの純真さに次第に惹かれていくが、闇の世界を這い上がってきた自分と関わってはSaraが穢れてしまうと、大切に想うがゆえに彼女を遠ざけようとする。

Then Came Youのスピンオフ。Devil in Winterで触発されて1年半ぶりの再読。まだちゃんとレビューも書いていなかったし。
いやー、Derek! なんとなくアルファ・ヒーローっぽいイメージが残っていたのだけれど、とんでもない。むしろ卑屈といってもいいキャラじゃないですか。下水道に産み落とされ(ゲ!)、両親も誕生日も知らないまま娼婦たちに育てられ、生き残るために当然のように犯罪を犯し、男娼として稼いだお金で始めた賭博場で大成功。裸一貫からロンドン一の金持ちにまでのし上がった超苦労人。自分に自信を持っていいはずなのに、自分には価値が無いと思っている。多分それは、心の底では「清く正しくあること」を求める気持ちが人一倍強いからなんだと思う。だからこそSaraに強く惹かれた、と。アピールされているのは「ヨゴれキャラ」ぶりなのに、何故かむしろ裏に秘められた「清さ」が際立っている。だからこそ、単なる不良ヒーローで終わらない魅力があるのかもしれない。
一方のSaraはこれとちょうど対照をなしていて、一見、真面目で堅実そうに見えるし(しかも眼鏡っ子)、自分もそう信じていて、自分が書く小説にあるような冒険や興奮は自身の手には入らないものと諦めている。でもそれは未知の世界への強烈な憧憬の裏返しなんですね。だからDerekに惹かれる。二人が本来の自分をお互いの手を借りて取り戻してくという、ストーリーなんですね。最初に読んだ時はとにかくDerekラブでそこまで目に入らなかった。きっと背骨がしっかりしてるから漫画的なのにリアルで説得力があるんだなぁ。
とはいえ、やっぱりDerekにトキメいて読むべき本なんだと思う。あんなイイ男に女神のように崇拝されるヒロインに自分を重ねてね(想像するのはタダだから)。その崇拝っぷりは痛々しいほどで、なんども「うぉぉぉ」と呻くこと請け合い(特にクライマックス!)。どこか映画的な描写もいい。前回の4つ星は辛すぎですね。返上して5つ星です。ちなみに、アンソロジーに入ったDerekとSaraの娘の話("Against the Odds")があるそうな。2006.3.29★★★★★

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2006.01.21

Gone Too Far

Gone Too FarGone Too Far
Suzanne Brockmann

Ballantine Books (Mm) 2004-03-10
売り上げランキング : 120,600
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海軍特殊部隊の"Team Sixteen"のメンバーSam Starrett大尉は、半年前に離婚手続きを始めたまま姿を消した妻のMary Louを追ってフロリダまでやってきた。ところがたどり着いたMary Louの住居でSamを迎えたのは頭を打ちぬかれた女性の腐乱死体。母親と一緒にいる筈の幼い娘 Haleyの姿はなかった。そのころ、半年前に基地で起こった大統領暗殺未遂事件に使われた凶器にMary Louの指紋が発見されて大騒ぎ。Samは尋問のために召喚されるが、犯人に連れ去られたに違いない娘を放っておけないSamは、元恋人(?)でもあるFBI捜査官のAlyssaの隙をついて逃亡。FBIから身を隠しつつ独自に捜索を進めるSam、FBIのお尋ね者となったSamを追うAlyssa。知力の限りをつくした二人の追いかけっこが始まる。一方、サンディエゴでは"Team Sixteen"のリーダーTomが、暗殺未遂事件のスケープゴートとして、テロ協力者の疑いをかけられ監禁されていた。

Troubleshootersシリーズ第6作 (The Unsung Hero, The Defiant Hero, Over the Edge, Out of Control, Into the Night)
わぉ、わぉ、わぉ。ファンの大きすぎる期待をさらに上回るすごい出来です。
はっきりいって、半分反則。なにしろ主役の二人には5冊分の歴史がある訳だし、プロットについても前作丸々お膳立てに費やしてるのだから、いい作品になって当たり前。でも、その当たり前で終わってないところが凄いね。恋愛においてはSamが追いかけAlyssaが逃げるという関係になっている二人を、プロットでAlyssaにSamを追わせる形に持って行っているのが良い。この追うものと追われるものの関係が裏腹になっているのが堪らなくエキサイティング! じっとしてても強烈な二人がそんな大変なことになってしまって、いやもう、読みながら興奮しっぱなしでした。そして何といっても、Samですよ。決してナイーブではないのに、素直で一途。タフなくせに泣き虫で、今回も泣きまくりです。泣かせます。我らがSamの子供時代のエピソードが一杯入ってたのも嬉しい。
主役のロマンスが凄ければ、脇役のロマンスも凄い。MaxとGinaの歳の差カップルがキてます。この二人も元々いいケミストリー持っていたけれど、今回は更にMaxのキャラに深みが増してレベルアップ。頭脳明晰冷静沈着なMaxが混乱して自分を見失ってる様は痛々しいやら色っぽいやら。これは主役はれるなぁ、と思ってたらシリーズ最新作では主役やってるみたいですね、やっぱり。
Marry Louについては「あ、手抜きやがった!」って感じです。個人的にはTomとKellyのエピソード省いてでも、もっと突っこんで欲しかったかな。絶対いいヒロインになれたのに。あと、第二次世界大戦のエピソードを入れるっていうスタイルを踏襲したい気持ちはわかるけど、あれは殆ど意味なかったですね。しかもちょっと説教がかって逆効果。神聖なエンターテイメントをプロパガンダの道具にしてはいけません! 作品全体のレベルが高かったのでギリギリ許せるけれど、あと一歩踏み越えてたら人権研修の教材になってましたぜ。訴えたい気持ちが強かったのだろうけれど、SamとAlyssaの愛を見せれば充分なのにね。
全体的に怪我人・死人が多すぎですが、それに見合ったテンションを保ってます。いや、もう、とにかくスペシャルな一作。ブラボー。2006.1.21★★★★★

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2006.01.13

The Veil of Night

The Veil Of Night (Signet Eclipse)The Veil Of Night (Signet Eclipse)
Lydia Joyce

Eclipse Pr 2005-04-30
売り上げランキング : 850,368

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1864年イギリス。伯爵家の道楽息子JackはRaeburn公爵に多額の借金があった。返済の見込みもないJackにRaeburnは法的手段に訴えることを仄めかす。家名に傷がつくことを恐れたJackの姉、32歳オールドミスのVictoriaは、Reburnの屋敷まで返済期限延長の交渉に出かける。Raeburnは廃墟同然の屋敷に引きこもって社会との交わりを絶ち、夜にしか出歩かないという噂の謎の多い人物。陽も差し込まない屋敷の異様な雰囲気に呑まれながらも、Victoriaは弟が伯爵の地位を相続するまで返済を待って欲しいと要求。それに対してRaeburnの出した条件は、Victoriaが一週間屋敷に滞在し、Raeburnの意のままになること、というものだった。

前半は正直、「もうこの作者の作品を読むことはないなぁ」と思いましたよ。ちょっと「嵐が丘」を思わせるオドロオドロしい雰囲気は大したものだったし、矢継ぎばやのラブシーンも大胆と言えなくもなかったけれど、なんとなく全体的にドライ。様式美を追求しすぎて心に迫ってこないタイプの作品かなぁ、と。ところが、じわじわとそれが変わっていって、後半はもうトキメキっぱなしでした。
一週間限定「愛の奴隷(^^;)」なーんていうエロチカ設定の割りには、後半はほとんどラブシーンがありません。じゃあ何してるかっていうと、互いに相手を知ろうと探りを入れあうわけです。仮面をつけて他人に心を閉ざし、大きな秘密を抱えて生きてきた二人が、怯えながらも徐々に相手に心を開いていく。台詞は殆どなくて、お互いの心情が変わりばんこにひたすら綴られるだけなんですが、これが何故か読ませる。VictoriaのもどかしさやRaeburnの切なさに「うぉぉ」と悶えっぱなしでした。自分をさらけ出すということは、服を脱ぐことよりもずっとずっと勇気のいる行為なのだなぁ、と。
定型キャラの定型設定で予想外の展開もないストーリー。でも、とってもとっても感動しました。心の動きが丁寧に書かれていたからかな。どっぷり感情移入して、最後は主人公と一緒にハッピーになる。これぞロマンス。最近満点出しすぎなのでちょっと辛くしようかとも思ったのですが、デビュー祝いということで。2005.1.13★★★★★

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2006.01.09

Into the Night

Into the NightInto the Night
Suzanne Brockmann

Ballantine Books (Mm) 2002-11-26
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大統領とその娘が、海軍特殊部隊の"Team Sixteen"が駐在するサンディエゴの基地に視察にやってくる。アフガニスタン侵攻真っ只中の大統領訪問は、海軍側としては迷惑以外の何者でもないが、次の大統領選を控えてイメージ作りに余念のないホワイトハウス側はなんとしても成功させるつもりだ。その視察に先立ってホワイトハウスの広報官Joan DaCostaがお膳立てにやってきた。彼女のお守り役に任命されたのが"Team Sixteen"のメンバー、"King of Polite" Mike Muldoon中尉。抜群のルックスのお陰で相手の女性には事欠かないMikeだったが、実はシャイで自分から女性を口説いたこともない。知的で明るく積極的なJoanの相手をしているうちに好意を抱き、何とか振り向かせたいとSamの指導の下(笑)に奮闘するのだがなかなか上手くいかない。それもそのはず、Joan自身もMikeに惹かれていたのだが、恋に落ちては大変と自分の心にブレーキをかけていたのだ。7つも歳下。おまけにサンディエゴとワシントンDCは大陸の西と東。本気になったら傷つくのは必至だ。しかし、惹かれる気持ちを抑えきれず・・・。一方、そんな二人の周辺では、視察に訪れる大統領を暗殺しようと、アルカイダのメンバーが着々と準備を進めていた。

Troubleshootersシリーズ第五作。
(The Unsung Hero, The Defiant Hero, Over the Edge, Out of Control)
私にとって、この作品の主役は絶対にMary Lou! 頭も心も弱くてホント駄目な女なのは間違いし、"SEALの妻"への固執は殆ど病気。でも、病気って本人に罪はないんですよね。アリガチだけれど駄目な親の元で不幸な少女時代を送っていて、自尊心を育てることなんて不可能だった。不幸から抜け出したいと周りを不幸に落としいれ、そして自分も更に不幸になるという不幸のスパイラル。SamとMary Louの結婚生活の描写はホントに悲しい。そんなMary Louが生まれて初めて本当の愛情を知る過程がサイドストーリーなのですが・・・。ああ、幸せになってくれMary Lou。あ、Samもね。
多分、シリーズ前半の山場であるSamとAlyssaを主役に迎える次作へのブリッジの役割を果たしているこの作品。Samがロマンスやれる環境作りという意味あいが大きかったのでしょう。主役のロマンスは何となく影が薄い。ヒーローMikeのキャラクターは二面性を狙ったのだろうけれど、イマイチ説得力に欠けてなんだか二重人格みたいだったし。私の想像力不足かもしれないけれど、礼儀正しく真面目な彼がカジュアルセックスに浸ってたというのはどうも納得がいかない。あとは、いつも通り第二次世界大戦話としてJoanの祖父母のロマンス。舞台は太平洋戦争ということで、若干居心地悪かったです。やっぱり私も日本人だなぁと。クライマックスの大統領訪問のシーンは圧巻。ドキドキしてページを繰るのがもどかしかったです。あと、舞台がサンディエゴということで"Team Sixteen"のメンバーの普段の生活や、昔の登場人物たちのその後が伺えたのも楽しかった。Kellyたちが奥様連中の集い(?)で見てたのは「高慢と偏見」だよね?
主役のロマンスはイマイチでしたが、やっぱり文章楽しいし物語の持っていき方上手いし、何しろMary Louが頑張っていたので5つ星。2006.1.8★★★★★

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2005.12.25

A Breath of Snow and Ashes

A Breath Of Snow And Ashes (Outlander)A Breath Of Snow And Ashes (Outlander)
Diana Gabaldon

Delacorte Pr 2005-09-27
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1773年。戦争の影が日増しに濃くなるアメリカ。イギリス政府の支配が揺らぎ、植民地は秩序を失いはじめる。強奪や放火が横行し、人里はなれたFraser's Ridgeも無事ではない。back coutryをまとめようと必死のイギリス側はJamieにインディアン管理官の職を命じる。職務を遂行する一方で連絡委員会の人間ともコンタクトを取り、独立派と国王派の間で危険な綱渡りを続けるJamie。そしてついに自らが独立派であることを宣言せざるを得なくなるが、それでも両者から疑いの目を向けられる。一方、お膝元のRidgeも安泰ではない。新しくやって来た住人達はプロテスタントで、カソリックのJamieに心を許そうとはしないのだ。しかし、同じプロテスタントであるRogerが住人をまとめるため奔走。思わぬ才覚を発揮することになる。
独立派と国王派の緊張が高まり、ついに1775年4月、独立戦争の火蓋が切って落とされる。ところがそのころ、Ridgeでも大変なことが起きていた。ある住民の策略でJamieとClaireが無実の罪を着せられたのだ。悪党や猛獣相手なら向かうところ敵なしのJamieも、さすがに一般人の悪意には打つ術がない。
国王派の友人との決別。イギリス国王との宣誓に縛られ、国王派として戦争に臨んだ多くのハイランダー達に銃を向けることになるJamieの葛藤。やってくる予言の日、1776年1月21日。そして永遠の別離・・・。

アウトランダーシリーズ、第6作。
Outlander/Dragonfly in Amber/Voyager/Drums of Autumn/The Fiery Cross)
ああ・・・もう、圧倒されました。読み終わったあとしばらく動けなかった。すごいわ・・・。
いやもう、あらすじなんて無理無理。上述のながーいあらすじも、この壮大な物語のほんの一部。Fraser's Ridgeの3年間はイベント的にもイモーショナルにも盛りだくさんでした。
シンプルな自然との闘いが大きな部分を占めていた前二作と違って、混乱を極める内政や、複雑になってくるRidgeの人間模様など、人と人の葛藤が中心になります。やっぱ、怖いのは人だし、感動させられるのも人なのだなぁと。華麗な文章、独特のユーモア("Acknowledgements"が面白いって凄いね)、圧倒的なリアリティ。この人の特徴は色々あるけれど、人を描かせた時の上手さってのを忘れてました。それに、次から次へと期待を裏切ってくれる過激なストーリーテリングも。そして、ばらばらに見えた個々の出来事が繋がっていくゾクゾク感。
JamieとClarieにスポットライトが戻ってくるのも嬉しいですね。もうそろそろ一線を退いていいお年頃なのに、次から次へと容赦なく試練が襲ってきます。それを手に手をとって乗り越えてゆく二人。愛だわ、やっぱ。Jamieは54歳になってもやっぱりセクシーでキュートな完全無欠史上最高のヒーローだし、Clarieは57歳(ご、ごじゅうななっ!?)になっても強く賢く美しい、最高のヒロインです。
スポットライトはJamieとClaireに、とは言え、他の登場人物の物語も充実しています。・・・なにしろ長いから(笑)。前作でぐんと成長したRogerとBriannaのカップルは、JamieとClaireとはまた違った素敵な夫婦像を描いてくれます。そして、Fergusの葛藤。Ianの喪失感。Lizzieのトンデモ結婚。新しい住人Tom Christieの悲しい愛のかたち(涙)。DuncanとJocastaの秘密・・・。いやはや。
OutlanderやDragonfly in Amberに並ぶ興奮度です。シリーズのここ数作の中ではピカイチ。大満足でした。次の作品が待ちきれません。・・・ああ、何年待たされるんだろう。とほほ。2005.12.25★★★★★★

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