2011.01.09

A Matter of Scandal

A Matter of Scandal (Avon Historical Romance)A Matter of Scandal (Avon Historical Romance)
Suzanne Enoch

Avon 2001-07-31
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育ての親である叔母の後を継いでフィニッシングスクールの校長をしているEmma。年頃の娘たちが幸せな未来を手に入れられるよう、知性と教養ある立派なレディに育て上げることを生きがいにしている。ところが地主から賃貸料を3倍に値上げすると突然の通告。これでは学校経営が立ち行かない。値上げの背景には、地主の甥っ子である不良公爵Greyの存在があった。危機的な状況にあった伯父の台所事情を知り、賃上げするよう意見したのだ。言い寄ってくる女たちにうんざいりしていたGreyは女性をとことん見下している。女性に知性などあるわけがない。どうせ男を誘惑する術を教えているに決まっている学校など、潰した方が世のためだ。賃上げに応じるわけにはいかないEmmaは賃上げをかけた賭けを受けて立つ。教育者として、経営者として、自分がGreyよりも優れていることを示すのだ。しかし、まさかその賭けが学校の存続にかかわる大スキャンダルに発展するとは…。

With This Ring3部作の三作目。ヒーローのGreyは女を見下し人を人とも思わない傲慢な不良公爵。公爵が不良だと迫力あるなぁと思ったのもつかの間。つまらない嫉妬で悶々とし、Emmaの生徒たちに翻弄され、果ては靴にゲロを吐かれた上に沼にまで突っ込む情けないその姿には威厳のかけらもなく、母性本能を刺激します。まるで誘惑の上手い小学生男子。たとえ血まみれになっても悲壮感のないそのキャラがなぜか魅力的でした。Emmaとの相性もよかったけれど、なんといってもEmmaの生徒たちとGreyのからみが楽しかった。Greyを変えたのはEmmaではなくって生徒たちなんじゃないかと思うほど。ストーリーは二作目の方が緊張感があって好きだったけれど、ラストの盛り上がりはよかったです。Emmaはちょっとキャラが薄かったかな。彼女の過去があまり活かされていなくて、とってつけたようになっているのが惜しい。★★★★

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2007.03.11

The Music of the Night

The Music of the Night (Signet Eclipse)The Music of the Night (Signet Eclipse)
Lydia Joyce

Signet Book 2005-11
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長年の友人de Lintにわずか十二歳の私生児Adelaがレイプされた。Sebastianはde Lintを訴えるが、de Lintは誘惑してきたのはAdelaだと言い張る。世間も外面のいいde Lintの言葉を信用し、怒りを納めぬSebastianを白い目で見る。ある日馬車の事故で命を落としかけたSebastianは、そのまま死を装って世間から姿を隠し、de Lintを油断させて復讐を狙う。de Lintを追ってベニスまでやってきたSebastianは、そこで彼の愛人らしき女性の姿を目にとめる。まずは復讐の第一歩として、仮面舞踏会にその愛人を誘いて出し誘惑しようと計画する。
実はその女性は愛人ではなく、de Lintの母の付添い人Sarahだった。ロンドンのもっとも貧しい地域に生まれ育ち、幼いころから生き延びるために身体を売らなければならなかったSarah。醜い世界から抜け出したいと、友人の力を借りて教育を受け、なんとか貴族の付添い人という地位まで這い上がってきた。しかし顔には天然痘の傷跡がある。予防接種も治療も受けられなかったことを示すその傷跡は、貧民窟の出身であることの証だった。そんな自分が、美しい男から誘惑されるなんて。仮面で傷跡をかくし、Sarahは一夜の夢とばかりに身を投げ出すが・・・。

デビュー作のThe Veil of the Night同様、心理描写が優れいています。とくにSarahがよく書けています。過酷な運命を生き抜いてきたヒロインに相応しい、キレイごとでない適度なハングリーさがいいです。それでいてどこか諦観したところもあったりして、健気ではかなくもあったりして、興味深いヒロインです。状況を理解することにエネルギーのほとんどを持っていかれていなければもっと楽しめたでしょう(泣)。いや、マジで。
ドロドロなストーリーに濃厚なキャラクターで、まったくの私好みなのですが・・・なにしろ文章がキツイ。いかにもヒストリカルなbig wordの連発。普段ならそんなの気にもせず読み飛ばすのですが、この作品の場合、Adelaのレイプ事件の真相、Sebastianの復讐計画の内容、Sebastianを狙う人物の存在、と謎のオンパレードなわけですよ。ただでさえ謎めきまくりなのに、わからない言葉が多すぎると・・・オイオイ、いま何が起こっているの?ってね。私には難しすぎました。充分な語彙をお持ちの方は是非お楽しみください。2007.3.10★★★★

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2006.09.18

A Summer to Remember

A Summer to Remember (Get Connected Romances)A Summer to Remember (Get Connected Romances)
Mary Balogh

Dell Pub Co 2003-03-04
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奔放な独身生活を謳歌していた不良貴族Kitは、家族からの圧力で望まぬ相手と婚約させられそうになる。かくなる上は大至急で、誰もが認める相手を婚約者として見繕わなければ。そんなKitが白羽の矢を立てたのがLaurenだった。不良貴族のKitなど相手にするはずもない完璧な貴婦人Laurenと、たった二週間で婚約にこぎつけてみせよう、とKitは友人たちと賭けをする。
一年前、結婚式の日に相手に捨てられるという大スキャンダルに見舞われていたLauren。貴婦人として恥ずかしくないように、と真面目に生きてきたこれまでの人生は間違っていたのだろうか、と疑問を抱いていたところへのKitの求愛。危険な相手だと周囲に反対されればされるほど、LaurenはKitに接近してゆく。
はじめはゲームを楽しんでいたKitだが、やがてLaurenをひとりの女性として見るようになると、賭けの対象としていることが恥ずかしくなり、結局すべてをLaurenに告白。愛されていた訳ではなかったと傷つきつつ、Kitの事情を知ったLaurenはある提案をする。ひと夏だけ、ふたりで婚約を装って、夏が終わった時点でLaurenから婚約を破棄しよう。そうすれば、Kitは望まぬ相手との婚約を回避できるし、Laurenもオールドミスとして静かな生活を手に入れることができる。そのかわり、思い出になる夏を経験させてほしい、と。

最初は"The Secret Pearl"とは随分違った、やけにあっけらかんと明るいトーンにビックリ。いろんなスタイルで書く人なのかなぁと思っていたら、ジワジワと色々な影が書き足され、しっとりと味わい深いロマンスに変貌しました。その変貌ぶりがホント自然でさりげないのと、重苦しくならずに深みを増すのが良い。Kitと弟Sydの確執なんてかなりヘビーだと思うのだけれど、どこか幻想的ですらあったり。なんでかな?
とにかく主人公二人がいいです。賢さと純粋さを兼ね備えたLauren、奔放でありながらも根は誠実なKit。この二人の魅力に尽きるんじゃないかな。KitのリードでLaurenが女性として花開いていく様子が痛快なんだけれど、そこはかとなくひと夏限定という切なさがあってグッときます。ツクツクボーシの声を聞く切なさが通奏低音になってるとでもいいましょうか、いや、なんとも情緒があります。絵になるシーンも多いし、素敵な映画をみたような読後感(2時間の映画には絶対収まらないけどね)。シリーズの一部らしく、脇役がやけに丁寧に描かれているので面食らいますが、コレだけ読んでも充分楽しめました。おすすめ。2006.9.10★★★★★

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2006.08.17

Scandal in Spring

Scandal in Spring (Wallflower Quartet)Scandal in Spring (Wallflower Quartet)
Lisa Kleypas

Avon Books (Mm) 2006-08
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ふたりの娘にイギリス貴族の亭主を見つけるため、家族総出でアメリカからやってきたBowman家。姉のLillianは見事ゴールインを決めて幸せな生活を送っていたが、妹のDaisyはイギリスにきて2年になる今も相手が見つかる気配はゼロだった。しびれをきらした父親は、5月末までに相手を見つけなければ、アメリカに戻って自分の会社の部下、Matthewと結婚させると宣言する。ボストンの名家Swift家の出身のMatthewは、Diasyの父がイチから育てた秘蔵っこで、ボスそっくりの冷徹なビジネスマン。Bowman家にも長年にわたって出入りしているから、LillianもDaisyも彼のことは良く知っている。あんな魅力もロマンもないガリガリの「骨ぶくろ」なんかと結婚させられては堪らない、と慌てたDaisyは最後のチャンスとばかりに鼻息もあらくStony Cross Parkでのパーティに臨むが、そこでイギリス工場の建設のために渡英してきていたMatthewと再会してビックリ。数年会わないあいだに見た目だけはすっかりイイ男になっていたのだ。一方、Matthewにはふたつの秘密があった。ひとつめの秘密はもう何年も密かな片想いを続けているDaisyへの気持ちだった。そのDaisyと結婚させようという計画を聞いてびっくり仰天するMatthew。しかし、もうひとつの秘密がある限り、Daisyの手をとることは叶わない・・・。

Wallflowerシリーズ第4作(Secrets of a Summer Night/ It Happened One Autumn/ Devil in Winter)。
「ヒロインに叶わぬ想いを抱き続けるヒーロー」って万人のツボじゃないですか? 少なくともわたしは大好き。このMatthewってヒーローはDaisyが好きで好きでしょうがないんだけど、自分のモノにする訳にはいかないので、別の男性に「あの子は最高にいい子だから貰ってやれ」なんてけしかけてみたりして、それでDaisyとそいつがイイ感じになるとドンヨリしたりしてる。ツボです(笑)。例のあの泉にかけた願いがまた胸キュン。それでもって、そんな彼の気持ちを知らないDaisyが攻めること攻めること。Matthewの追い詰められっぷりを堪能する一作です。
Daisyには正直期待してませんでした。どうも彼女って印象が薄い。Annabelleのように美人でもないし、Lillianのように激しくもないし、Evieのように不幸でもない。可もなく不可もない、お姉ちゃんの腰巾着。でも、この作品読んで、「ああ、誰でもヒロインになれるんだなぁ」ってシミジミ思いました。以前も書いたように、ヒーローは読者も恋するような魅力ある男性でなければロマンスは成立しない。だけど、どんな平凡な女の子でも、ヒーローの目にさえ特別に映っていれば、立派にヒロインになれるんですね。いやホント、見事なまでにヒロインしてます。
残念なのはラスト。ミステリじゃないんだから、一同集めて延々謎解きなんてのはちょっと頂けないし、ギリギリまでひっぱってからMatthewの秘密の種明かしをしたものだから、かなりドタバタしてしまってバランスが悪い印象が残ったかな。でも、元Wallflowerたちのバカップル振りも拝めたし(Lillianの出産にオロオロするMarcus!)、シリーズのラストとしては満足です。2006.8.17★★★★

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2006.08.09

The Indiscretion

The IndiscretionThe Indiscretion
Judith Ivory

Avon Books (Mm) 2001-04-03
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1899年イングランド
侍女の結婚式の帰り道、Lydiaは両親には黙ってひとり従兄弟の家への寄り道を計画する。わずか数時間の馬車の旅だが、子爵家の箱入り娘Lydiaにとっては一世一代の大冒険だ。ところが、酔っ払った御者が馬車から転落し、馬車が暴走をはじめたのもだから、旅はホンマもんの大冒険へと転ずる。沼に突っこんだ馬車から間一髪で脱出したものの、もうひとりの乗客、カウボーイハットにブーツ姿のアメリカ人Samとふたりきりで無人の荒野をさまようはめに。Samのサバイバル能力に助けられつつ遭難生活を送るうちに、ふたりは当然のように惹かれあうようになる。やがて心配して探しにきた従兄弟に救助され、Samに別れを告げるLydia。どんなに好きな相手でも、現実の世界では子爵の娘とカウボーイが付き合うなんて許されない。Lydiaは親の選んだしかるべき男性と結婚しなければいけないのだ。ところが、子爵家で開かれたとあるパーティに現れた男性にLydiaは仰天する。紳士然と正装したSamだった・・・。

奇しくも今日(明日?)「舞踏会のレッスンへ(原題: The proposition)」で日本デビューするJudith Ivoryです。この人ってホント、彼女にしかかけないロマンスを書いてくれます。飄々として赤裸々、とでも言いましょうか。真面目な顔して冗談を言い、ふざけたふりして真情を語る、あの独特の雰囲気は好き嫌いがあるかも知れませんが、ファンにはたまらない魅力。際立ったキャラクター造形も特長です。
傑作ぞろいの彼女の作品のなかでは、今回のは少し評価が落ちるかな。いや、前半はいいんです。自主自立に憧れる深窓の令嬢と、理由はさておき三度も結婚式をぶっちした奔放なカウボーイ。ヒストリカルではみたことのない独創的なカップリングのふたりが荒野をさまよう! それはもう、面白いです。自然のなかで時間を過ごすうちにふたりとも活き活きしてきて、何故か楽しげにすら映る遭難生活。ふたりのケミストリーもばっちりで、登場人物ふたりしかいないのに全く飽きさせません。AVかと見まごうラブシーンの台詞まわしにはちと参りますが(笑)。
ところが後半、現実世界に戻ってからは残念ながら少々失速気味。Samの正体が明かされて、へぇという驚きはあるんだけれど、肝心のふたりのロマンスがどこか不自然。特にLiddyの心の動きが迷走気味。Emotionalな正確さを誇るJudith Ivoryがどうしちゃったの、という説得力の弱さ。いや、悪くはないんだけれど、もうちょっとこう、ガツンと脳髄に一撃を期待していたので残念だなぁ、と。2006.8.9★★★★

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2006.07.15

The Secret Pearl

The Secret PearlThe Secret Pearl
Mary Balogh

Dell Pub Co 2005-11-29
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殺人の罪を着せられそうになり、着のみ着のままロンドンに逃げてきたFleur。所持金も底をつき、もう二日間何も食べていない。とうとうFleurは生きるために身体を売ることを決心する。初めてのお客は顔と身体に傷をもつ紳士。食事を奢ってもらい、気前良く要求の三倍の代金を支払ってはくれたものの、優しさのかけらもない彼の行為にFleurは身も心も傷つく。やがて、その金すら使い果たし、再び客をとる覚悟で街に出てきたFleurは、思いがけず家庭教師の職を得ることに。あと数日早くこの仕事を得ていれば、穢れた身体にならずにすんだものを、と運命を呪いつつ、Fleurは新しい職場Willoughby Hallへと向かう。女主人と乳母に冷たくあしらわれ、甘やかされて育った5歳の生徒に手をやきつつも、Fleurは自分の生きる場所をWilloughbyに見出していく。やがて、ずっと不在だった家の主がロンドンから戻ってくる。主人の顔をみたFleurはショックをうける。なんと、あのときの男ではないか。

うひょ~! というのが最初の10ページを読んだときの感想。ひさびさにガツンとやられました。
少女が身体を売るというショッキングなシーンを、センセーショナルに走らずに、抑制されたトーンで俯瞰的に綴っていく。それでいて、そのシーンだけでFluerというキャラクターがわかってしまうという。うわぁ~凄いなコレ、とワクワクしました。しかも、その時の冷酷な客がヒーローで、しかも妻子持ちと知ったときの興奮。どうするねん、どうやって落とし前つけるねん、と。いや、だって、読者の多くが主婦であるロマンス業界において、ヒーローの不倫はご法度でしょう? しかも子供持ちですよ? どうやって落とし前ついたかは読んでみてのお楽しみ。
なにしろ上手いですね。Fleurの過去がチラチラ、公爵家の秘密がチラチラと、いろいろ含みを持たせたもままストーリーが進行するのですが、流れがまったくもたつかないのは立派。ロマンチックサスペンスとか、結構イライラしてしまうことの多い堪え性のないわたしでも楽しく読めました。勢いにまかせない緻密な構成が伺えます。ヒストリカルにつきもののいわゆるbig wordsがほとんど使われていないのに、ちゃんと品の良いクラシカルな文章になっているのもお見事。まったくブレのないトーンは憎たらしいほどで、もっと筆が滑ってもいいのにと感じたほど。中盤、わたしの好みからするとあまりにコントロールされすぎているかな、とも思ったのですが、後半はばっちりアツく泣かせてくれたので5つ星です。いやもう、あの馬車で小指からめるシーンとか、ピアノフォルテを贈られたシーンとか、ノックアウトですよ。ふたりの深~い愛にトキメキました。おすすめ。2006.7.15★★★★★

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2006.07.09

McClairen's Isle: The Passionate One

McClairen's Isle: The Passionate One (McClairens Isle)McClairen's Isle: The Passionate One (McClairens Isle)
Connie Brockway

Dell Pub Co 1999-06-08
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AshはMerrick家の長男坊。弟とともに長くフランスの牢屋生活を送っていたが、父親の出した保釈金のおかげでイギリスに戻ってきた。ただし、ひとりで。まだ監獄に残っている弟の保釈金を稼ぐため、Ashは冷酷な父親の操り人形となる。今回の指令は、イギリスに暮らすRhiannonという女性をMerrick家の本拠地Wanton's Blushに連れてくること。実は父親はRhiannonの後見人なのだが、これまでは完全に無視していた。それが突然連れて来いという。おそらくRhiannonを4番目の妻にしようというのだろう。Ashが幼い頃に事故死した母親をはじめ、父親の妻たちは全員謎の死を遂げている。父親が殺したのだという噂もチラホラ。Rhiannonも妻となれば殺されるのではと思いつつ、Ashは父親の命令を断ることができない。
Rhiannonはジャコバイトの反乱で孤児となったハイランドの娘。当時の悪夢にいまだ苛まされはするものの、育ての親の愛につつまれ、婚約者Phillipとの結婚も間近に控え、平凡だが幸せな毎日を送っていた。しかし、そこに突然やってきた謎の男Ash。ハンサムでセクシーなAshに、Rhiannonの心は激しく乱される。
Rhiannonが婚約していたことで、Ashは安堵する。これで父親との結婚は有り得ない。ところが、Rhiannonは誰かに命を狙われているらしいということに気がつくAsh。さりげなくRhiannonの身辺を護衛し、犯人を突き止めようとする。しかし、ただ遠巻きに眺めているにはRhiannonはあまりにも魅力的で・・・。

"MaClairen's Isle"というMerrick家の三きょうだいを主役としたシリーズものの第一作。
As You Wish, All Throught the NightとハートをわしづかみにしてくれたConnie Brockwayがハイランドを舞台に書いたということで、いや、めっちゃ期待していました。ところが・・・あれっ? ちょっと、コレはどうよ?
著者を知らずに読んでいたら、「これだから素人は・・・」とか思っちゃいそうな迷走ぶり。色々設定に工夫を凝らしてくれてはいるんだけれど、何がしたいのか意味が不明。loose endが多すぎ。Rhiannonの家族の死とMerrickの暗い過去を絡めたいんだか、絡めたくないんだか。結局Phillipは何者だったのか(ただの寝取られ男?)。父親の三人の妻たちの死は何だったのか。冒頭でかなりページを割いて解説してくれたWanton's Blushの歴史にしたって、重要なんだか重要じゃないんだか。あれれ。私数十ページ読み飛ばした? なんか重要なこと見落としてる? 
ロマンスの外のプロットが緩み気味なら、ロマンス本体もイマイチ。心の動きに流れがない。ところどころに心ときめく素敵なシーンがあったりはするんだけれど、どうも突発的。イベントを重ねてテンションを上げていくって感じは皆無。打ち上げ数が超少ない花火大会を見ている気分ですよ。あれー? どうしちゃったの? 2006.7.9★★★

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2006.06.12

The Other Boleyn Girl

The Other Boleyn GirlThe Other Boleyn Girl
Philippa Gregory

Touchstone Books 2002-06-04
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舞台は16世紀、ヘンリー8世治世下のチューダー朝宮廷。新興貴族Boleyn家の娘Maryは王妃のお気に入りの侍女として宮廷生活を送っていた。Maryの姉Anneがフランス宮廷からイギリスに帰ってくるところから物語がはじまる。当時Anne15歳、Mary14歳。ふたりのBoleyn家の娘たちは宮廷の中心となり、まずはMaryが王の寵愛を得る。既に12歳のときに結婚していたMaryだが、家族に言われるがまま夫の元を離れて王の愛人となる。敬愛する王妃への想いに引き裂かれながらも、王の愛人という立場や人々の注目を楽しんでいたMaryだが、成長とともに覚めた目で宮廷をみるようになっていく。やがて、姉のAnneが王の寵愛を奪う。ふたたび家族に言われるがまま、今度は姉の侍女として後押しにまわるMary。Anneは憑かれたように計略の限りをつくして王妃の座まで登りつめ、王とともにイギリス王家の権力を拡大してゆくが、やがて王子を産めないAnneに王の気持ちは冷め、後は1536年5月の悲劇めざして転落の一途をたどる。一方、Maryは宮廷の外に本当の幸福を見出していく。

【これはロマンスではありません】
”エンターテイメントとは共感である”という個人的定義に従って言えば、これはエンターテイメントの範疇にかろうじて収まるかね、という作品。というのも、いやもう凄いんです、この宮廷ってやつが。
王を楽しませ、王の歓心をかうことが究極の存在意義なわけで、その価値観の歪みっぷりときたらグロテスクといってもいいほど。冒頭、12歳で結婚したMaryが夫婦生活について無邪気に語るシーンで「こわっ」と思いましたが、そんなの序の口。自分の娘を嬉々として王に差し出す家族。言われるがままに王を誘惑する少女。超越した価値観が、語り部であるMaryの幼さとあいまって、共感の余地はゼロ。政治の道具としていいように使われるMaryをただポカンと口をあけ、呆然と見ているって感じでしょうか。
しかしMaryが成長してゆくと、少しずつ変わっていきます。現在とは違う価値観をもちながらも、冷静に周りを観察し、物事を深く理解してゆくMary。Maryの目を通して描かれるAnneの奮闘は、見苦しくも痛々しく、単なる悪女では片付けられない。特に男子を産まなければいけないというプレッシャーのなかで壊れてゆくさまは、ただただ悲しい。このAnneとMary(それから兄のGeorge)の関係がまたものすごいんです。愛憎半ばするなんて言葉では表しきれない、強烈な関係です。究極のライバルでありながら、最も信頼する友でもあり、心底憎みつつも見捨てられない・・・うーん、やっぱり表現できない。
やがてMaryは愛し愛されることの幸福を知り、宮廷的価値観から脱却してゆくわけですが、このあたりからようやく共感が生まれます。本当の幸せって何だろうという、比較的判りやすいところにストーリーも落ち着いてゆきます。そして、最後の100頁ほど、Anneの失脚に伴ってMaryにも危険が及ぶあたりは「うわー、どうするどうするどうする」と心臓バクバクで一気読みです。Anneはロンドン塔の幽霊(笑)になるって知ってたけど、Maryの運命は知らなかったからね。
というわけで、とくに前半は非常に共感が難しい。でも、納得はできるんです。多分それはひとりひとりのキャラクターが物凄く鮮明なのだからだと思う。王妃をとっかえひっかえしたヘンリー8世の動機ですら、異常だとは思いつつ、納得できるんです。AnneとGeorgeの常軌を逸した選択にしたって納得できるんです。それって凄いことだと思う。冷たい事実と年号の列挙であった歴史の世界が、体温を体臭をもってよみがります。華麗でグロテスクな宮廷絵巻と、パワーゲームの駒として翻弄される女の悲哀、愛しつつ憎みあう姉妹の絆、そんな濃厚な世界に浸ってみたいかたにお勧めのヒストリカル・フィクションです。2006.6.12★★★★★

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2006.05.14

The Bride of Black Douglas

The Bride of Black Douglas (Mira Historical Romance)The Bride of Black Douglas (Mira Historical Romance)
Elaine Coffman

Mira Books 2006-01
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1785年イギリス
Meleriは幼い頃に母親をなくし、痴呆症の老父と共にイングランド国境近くの田舎町にひっそり暮らしている。生後まもなく定められた許婚Waverly卿は見た目は麗しいが中身はとんでもなく危険で残酷な男だ。友人からの手紙から、Waverlyがロンドンで公然と愛人を連れて歩いているという話を知ったMeleriは、心を決めてWaverly卿に会いに行き、見事婚約解消を取り付ける。喜んだのも束の間、翌日彼から婚約解消を撤回する手紙が届く。手紙の内容から、いまや彼の異常な残酷さが自分に向けられたことを確信したMeleriは、着の身着のまま家を飛び出す。
スコットランドの没落貴族の長Robertは追い詰められていた。経済状況は危機的で、いよいよ居城そのものの存続も危うい。しかもRobertを危険人物として目をつけているイングランド国王からは「二週間以内にイングランド人の妻を娶るように」との命令が下される。やむなく嫁探しの旅に国境を越えたRobertは、狂ったように馬を駆る赤毛の少女に出会う。彼女が死んだ妹の仇Waverly卿の許婚であると知って、Robertは彼女を花嫁候補として連れて帰ることにする。Robertにとっては、王の命令とWaverlyへの復讐、両方を一気に叶える千載一隅のチャンスだ。
Meleri奪回を狙うWaverly、イングランド人であるというだけでMeleriに心を閉ざすRobert、朽ち落ちんばかりのBeloyn城、そして伝説の幽霊。Meleriは持ち前の気丈さで逆境を乗り越えていく。

これはロマンスなのか? というのが第一の感想。むしろプチ・ビルドゥングス・ロマンというか、Meleriの冒険物語なのでは? 物心ついたときからずっと孤独だったMeleriが逆境をのりこえて自分の居場所を獲得する、というのがメインのストーリーなのかも。あるいは、Meleriと幽霊がDouglas家の危機を救うという。どっちにしろMeleriとRobertのロマンスはメインという感じがしない。「Meleriが冒険の過程で手に入れた宝物のひとつ」という方がしっくりくる。いやいや、ひょっとするとヒーローはRobertではなくて幽霊なのかも! なにしろ、MeleriとRobertよりもMeleriと幽霊の方がずっと強烈なケミストリーがあったし、作品で一番感動的なシーンはMeleriと幽霊のシーンなのだ。
それからもうひとつ特筆すべきはラブシーン。いや、エロチカ読んだあとでまさにその対極をゆく奥ゆかしいラブシーンは新鮮でした。ふたりが初めて結ばれるシーンでは、コトが終わってしまうまで結ばれたことに気がつかなかったという(笑)。
冗談はさておき、Meleriのインパクトに比してRobertのキャラクターの弱さは否めない。憎きイングランド人であるMeleriへ心を開いていく過程もあいまいだし、そもそも彼にとっての最大の「葛藤」であったはずの妹とWaverly卿の関係に関する秘密は最後までMeleriに打ち明けずじまい。というわけで、ロマンス方面ではイマイチ満足感が得られなかった。MeleriがDouglas家に溶け込んでいく様子や、最後の宝探しのシーン、それになにより幽霊とMeleriとの交流は読み応えがあったのに。…それともやっぱり幽霊がヒーロー!? 2006.5.14★★★

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2006.04.30

The Wolf and the Dove

Wolf and the DoveWolf and the Dove
Kathleen E. Woodiwiss

Avon Books (Mm) 1996-08
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1066年 イングランド。
ノルマンディー公William率いるノルマン軍がイングランドに侵攻。イングランド国王Edwardの統治は風前の灯火だった。Aislinnの住むDarkenwaldもノルマン軍の手に落ち、一夜にしてAislinnは領主の娘から奴隷の身に転落する。父は殺され、母はすさまじい暴行を受けて発狂、Aislinn自身もノルマン軍の騎士Ragnorによって陵辱さてしまう。Williamの命により占領後のDarkenwaldの領主となることになっていた騎士Wulfgarは、これに遅れて到着し、Ragnorによる大殺戮の跡をみて愕然とする。残された住人たちをまとめ、廃墟となったDarkenwaldを立て直さなければならない。WulfgarはAislinnを通じて住人たちを支配しようと、彼女に愛人になることを強要する。Darkenwaldの人々を無意味な死から守るため、プライドを押し殺して愛人の座に甘んじるAislinn。しかし、その傲慢な鎧の中に潜んだWulfgarの公正さや情け深さに触れるにつれ、Aisulinnは彼に惹かれていく。Wulfgarも美しく誇り高いAisulinnに心を動かされるが、私生児として自分を産んだ母に酷い仕打ちをうけて女性に対する愛情と信頼を失ったWulfgarは、決してAisulinnに心を許そうとはしなかった。そんな二人の周りにはAisulinn欲しさにWulfgarに敵愾心を抱くRagnorや、奴隷の身で女主人の座に収まるAisulinnを苦々しく思うWulfgarの妹など、陰謀の影が渦巻く。やがてAisulinnは自分が身ごもっていることを知る。父親はRagnorなのか、Wulfgarなのか?

最初に奥付を見てビックリ。1974年初版の74刷!? 
ファンの人には悪いけれど、バーバラ・カートランドの作品を読んで「なんじゃこりゃ」と思って以来、古い時代の作品は敬遠していたはずだったのに。未読の棚に長く埋もれていたせいで、どういう意図で購入したのか今となっては分からない。ちょっとでもヒントが得られればとAll About Romanceで作品情報を探してみた。
で、結局購入した理由は不明なままだったのだけれど、その代わり面白いことがわかった。この本は、というかこの本に代表される70年代のロマンス作品はとーっても評価が分かれるらしい。旧来のロマンス・ファンを中心に熱烈に愛する人々がいるかと思えば、一方で新興ロマンス・ファンを中心に"Bodice Ripper(笑)"と呼んで見下す人々がいる。崇拝者曰く「近ごろの作品は短かすぎて深みがない。主人公も良い子ちゃんばっかり。"Wulfgar"はどこに行ってしまったんだ?」と。敬遠派曰く、「二人の人間の物語に500ページはあまりに冗長。野蛮で暴力的で登場人物も浅掘り。文章は華美でいかんせん古臭い。」と。喧々諤々の論争が繰り広げられている。
こりゃ面白そう、とワクワクしながら読んでみましたが、うん、どちらの言い分も正しい! "Bodice Ripper"とは言ったもので、Aisulinnのドレスは裂かれて裂かれて裂かれまくり、とうとう着るものがなくなってしまうほど。別に笑いを意図して書かれているわけではないだろうに、思わずふきだしてしまった。あまりにステレオタイプな悪人にはちょっと興ざめだし、どこか書割っぽい嘘くささもある。イベント重視型で、登場人物の内心に迫る部分は無いわけじゃないけれど、非常に限られている。だけど、500ページが長すぎるかというと、たしかに長いけれど、そこはやっぱり長編ならではの旨みもある。暴力性だって中世という舞台によく合っていると思う。それにWulfgarですよ。いやー、悪いけどタイプ。超このみ。
それよりも、個人的にはAislinnのキャラクターが一番ひっかかった。何なんですか、あのコムスメは。結婚してくれ、結婚してくれと言うわりに、本当にWulfgarのことを愛しているのかどうかが全然伝わってこない。とうとう最後まで感情移入できずじまい。これはAislinn特有の問題なのか、70年代ロマンス共通の性質なのかはわからないけれど、かなりの減点材料なのは間違いない。だって、感情移入できなくて何のためのロマンス?
でもWulfgarが素敵だし、中世ロマンスにちょっと目覚めたので4つ星。2006.4.30★★★★

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