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2006.06.12

The Other Boleyn Girl

The Other Boleyn GirlThe Other Boleyn Girl
Philippa Gregory

Touchstone Books 2002-06-04
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舞台は16世紀、ヘンリー8世治世下のチューダー朝宮廷。新興貴族Boleyn家の娘Maryは王妃のお気に入りの侍女として宮廷生活を送っていた。Maryの姉Anneがフランス宮廷からイギリスに帰ってくるところから物語がはじまる。当時Anne15歳、Mary14歳。ふたりのBoleyn家の娘たちは宮廷の中心となり、まずはMaryが王の寵愛を得る。既に12歳のときに結婚していたMaryだが、家族に言われるがまま夫の元を離れて王の愛人となる。敬愛する王妃への想いに引き裂かれながらも、王の愛人という立場や人々の注目を楽しんでいたMaryだが、成長とともに覚めた目で宮廷をみるようになっていく。やがて、姉のAnneが王の寵愛を奪う。ふたたび家族に言われるがまま、今度は姉の侍女として後押しにまわるMary。Anneは憑かれたように計略の限りをつくして王妃の座まで登りつめ、王とともにイギリス王家の権力を拡大してゆくが、やがて王子を産めないAnneに王の気持ちは冷め、後は1536年5月の悲劇めざして転落の一途をたどる。一方、Maryは宮廷の外に本当の幸福を見出していく。

【これはロマンスではありません】
”エンターテイメントとは共感である”という個人的定義に従って言えば、これはエンターテイメントの範疇にかろうじて収まるかね、という作品。というのも、いやもう凄いんです、この宮廷ってやつが。
王を楽しませ、王の歓心をかうことが究極の存在意義なわけで、その価値観の歪みっぷりときたらグロテスクといってもいいほど。冒頭、12歳で結婚したMaryが夫婦生活について無邪気に語るシーンで「こわっ」と思いましたが、そんなの序の口。自分の娘を嬉々として王に差し出す家族。言われるがままに王を誘惑する少女。超越した価値観が、語り部であるMaryの幼さとあいまって、共感の余地はゼロ。政治の道具としていいように使われるMaryをただポカンと口をあけ、呆然と見ているって感じでしょうか。
しかしMaryが成長してゆくと、少しずつ変わっていきます。現在とは違う価値観をもちながらも、冷静に周りを観察し、物事を深く理解してゆくMary。Maryの目を通して描かれるAnneの奮闘は、見苦しくも痛々しく、単なる悪女では片付けられない。特に男子を産まなければいけないというプレッシャーのなかで壊れてゆくさまは、ただただ悲しい。このAnneとMary(それから兄のGeorge)の関係がまたものすごいんです。愛憎半ばするなんて言葉では表しきれない、強烈な関係です。究極のライバルでありながら、最も信頼する友でもあり、心底憎みつつも見捨てられない・・・うーん、やっぱり表現できない。
やがてMaryは愛し愛されることの幸福を知り、宮廷的価値観から脱却してゆくわけですが、このあたりからようやく共感が生まれます。本当の幸せって何だろうという、比較的判りやすいところにストーリーも落ち着いてゆきます。そして、最後の100頁ほど、Anneの失脚に伴ってMaryにも危険が及ぶあたりは「うわー、どうするどうするどうする」と心臓バクバクで一気読みです。Anneはロンドン塔の幽霊(笑)になるって知ってたけど、Maryの運命は知らなかったからね。
というわけで、とくに前半は非常に共感が難しい。でも、納得はできるんです。多分それはひとりひとりのキャラクターが物凄く鮮明なのだからだと思う。王妃をとっかえひっかえしたヘンリー8世の動機ですら、異常だとは思いつつ、納得できるんです。AnneとGeorgeの常軌を逸した選択にしたって納得できるんです。それって凄いことだと思う。冷たい事実と年号の列挙であった歴史の世界が、体温を体臭をもってよみがります。華麗でグロテスクな宮廷絵巻と、パワーゲームの駒として翻弄される女の悲哀、愛しつつ憎みあう姉妹の絆、そんな濃厚な世界に浸ってみたいかたにお勧めのヒストリカル・フィクションです。2006.6.12★★★★★

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コメント

はじめまして。
この小説、米国で映画になりました。2008年の2月29日に公開になるそうです。日本では公開されないかもしれません。
とてもよい感想を書かれていますね。

投稿: KE007 | 2007.11.20 23:49

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