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2006.06.25

Flashpoint

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Suzanne Brockmann

Ballantine Books (Mm) 2004-10-26
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相棒のDeckerを見殺しにしようとしたCIAに愛想をつかしたJimmyは、DeckerとともにCIAを辞して元SEALsリーダーTomの経営するTroubleshooters Inc.に加わった。Troubleshooters Inc.での最初の仕事は、カズベキスタンでおこった大地震で命を落としたとあるテロリストのノートPCを見つけること。テロの情報テンコ盛りなPCをアメリカは欲しくてしかたがないが、国境を閉ざしたカズベキスタンに表立って進入することはできない。そこで、Troubleshootersが仕事を請け負ったわけだ。JimmyとDeckerは他のメンバーとともに復旧作業ボランティアを装って危険なカズベキスタンへと潜入する。ただ、Jimmyにとって問題がひとつ。コンピュータの専門家としてメンバーに加わったCIAでの同僚、Tessの存在だ。諜報員として入局した筈なのに、いっこうに内勤から解放してくれないことに業を煮やしたTessはCIAをやめてTroubleshootersに入社していたのだ。CIAでは仲の良かったJimmyとTessだったが、一夜限りの関係を結んだあとJimmyがTessの前から姿を消して以来のきまずい再会だった。

Troubleshootersシリーズ第7作(The Unsung Hero, The Defiant Hero, Over the Edge, Out of Control, Into the Night, Gone Too Far)
前作Gone Too Farでひと段落したTroubleshootersシリーズ。装いも新たに第二シーズンの幕開けです。SEALsを去ったTomが会社を興し、そこにSamとAlyssaが加わったというところで終わっていた第一シーズンですが、こんどはその会社が舞台となるようです。表向きはまさにTroubleshooters、人々の問題を解決する特殊技能者集団といった面持ですが、その実、今回のように政府から依頼を受けて極秘の対テロ作戦を実行したりもする怪しい会社。
TomとCosmoがちらりと顔をだしますが、それ以外はまったく役者が入れ替わっていて、新シーズンのはじまりを印象づけています。あとは構成もがらりと変わって、前作まで必ず入っていた第二次世界大戦のエピソードもないし、脇役ロマンスもほとんどありません。前半の一部をのぞいては複数のプロットが交錯することもなく、主役ロマンスと作戦遂行の様子にほぼ集中です。ということで、良し悪しはさておき、かなりリフレッシュしたことは間違いありません。
ということで、主役ロマンスの出来にほぼ依存することになるわけですが、私的には・・・うーん、もう一息! いや、決して悪くないんです。やっぱりこの人は上手だなぁと思わずにはいられない安定した筋運びに、テンションの高い文章。スーザン・エリザベス・フィリップスかと思うような、私好みの馬鹿男系ヒーロー。ただ、どうしようもないふたりのすれ違いを説明するには馬鹿男っぷり(笑)が足りなくって、イマイチ納得いかなかったかな。それに、友人DeckerもTessに惚れているっていう設定も少し中途半端。最初、「お、”タッチ”状態か?」とトキメキましたが(古い?)、なんだか尻つぼみになっちゃって、なんのための三角関係だったのやら。ま、ヒーロー・ヒロインの幸福が他人の不幸の上に成立するのはマズイという配慮でしょうが。とはいえ、Tessが自爆テロに巻き込まれたかと思って動転するJimmyの描写とか、情熱的・感動的な告白のシーンとかは、さすが!って感じでしたが。とりあえず、次作に期待ってとこでしょうか。
そうそう、SamとAlyssaは本編では名前しか出てきませんが、スペシャルおまけとして、結婚数ヵ月後のふたりの様子を描く8ページの短編がついていました。ま、仲良くやってるのね、ってことで。2006.6.24★★★★

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2006.06.12

The Other Boleyn Girl

The Other Boleyn GirlThe Other Boleyn Girl
Philippa Gregory

Touchstone Books 2002-06-04
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舞台は16世紀、ヘンリー8世治世下のチューダー朝宮廷。新興貴族Boleyn家の娘Maryは王妃のお気に入りの侍女として宮廷生活を送っていた。Maryの姉Anneがフランス宮廷からイギリスに帰ってくるところから物語がはじまる。当時Anne15歳、Mary14歳。ふたりのBoleyn家の娘たちは宮廷の中心となり、まずはMaryが王の寵愛を得る。既に12歳のときに結婚していたMaryだが、家族に言われるがまま夫の元を離れて王の愛人となる。敬愛する王妃への想いに引き裂かれながらも、王の愛人という立場や人々の注目を楽しんでいたMaryだが、成長とともに覚めた目で宮廷をみるようになっていく。やがて、姉のAnneが王の寵愛を奪う。ふたたび家族に言われるがまま、今度は姉の侍女として後押しにまわるMary。Anneは憑かれたように計略の限りをつくして王妃の座まで登りつめ、王とともにイギリス王家の権力を拡大してゆくが、やがて王子を産めないAnneに王の気持ちは冷め、後は1536年5月の悲劇めざして転落の一途をたどる。一方、Maryは宮廷の外に本当の幸福を見出していく。

【これはロマンスではありません】
”エンターテイメントとは共感である”という個人的定義に従って言えば、これはエンターテイメントの範疇にかろうじて収まるかね、という作品。というのも、いやもう凄いんです、この宮廷ってやつが。
王を楽しませ、王の歓心をかうことが究極の存在意義なわけで、その価値観の歪みっぷりときたらグロテスクといってもいいほど。冒頭、12歳で結婚したMaryが夫婦生活について無邪気に語るシーンで「こわっ」と思いましたが、そんなの序の口。自分の娘を嬉々として王に差し出す家族。言われるがままに王を誘惑する少女。超越した価値観が、語り部であるMaryの幼さとあいまって、共感の余地はゼロ。政治の道具としていいように使われるMaryをただポカンと口をあけ、呆然と見ているって感じでしょうか。
しかしMaryが成長してゆくと、少しずつ変わっていきます。現在とは違う価値観をもちながらも、冷静に周りを観察し、物事を深く理解してゆくMary。Maryの目を通して描かれるAnneの奮闘は、見苦しくも痛々しく、単なる悪女では片付けられない。特に男子を産まなければいけないというプレッシャーのなかで壊れてゆくさまは、ただただ悲しい。このAnneとMary(それから兄のGeorge)の関係がまたものすごいんです。愛憎半ばするなんて言葉では表しきれない、強烈な関係です。究極のライバルでありながら、最も信頼する友でもあり、心底憎みつつも見捨てられない・・・うーん、やっぱり表現できない。
やがてMaryは愛し愛されることの幸福を知り、宮廷的価値観から脱却してゆくわけですが、このあたりからようやく共感が生まれます。本当の幸せって何だろうという、比較的判りやすいところにストーリーも落ち着いてゆきます。そして、最後の100頁ほど、Anneの失脚に伴ってMaryにも危険が及ぶあたりは「うわー、どうするどうするどうする」と心臓バクバクで一気読みです。Anneはロンドン塔の幽霊(笑)になるって知ってたけど、Maryの運命は知らなかったからね。
というわけで、とくに前半は非常に共感が難しい。でも、納得はできるんです。多分それはひとりひとりのキャラクターが物凄く鮮明なのだからだと思う。王妃をとっかえひっかえしたヘンリー8世の動機ですら、異常だとは思いつつ、納得できるんです。AnneとGeorgeの常軌を逸した選択にしたって納得できるんです。それって凄いことだと思う。冷たい事実と年号の列挙であった歴史の世界が、体温を体臭をもってよみがります。華麗でグロテスクな宮廷絵巻と、パワーゲームの駒として翻弄される女の悲哀、愛しつつ憎みあう姉妹の絆、そんな濃厚な世界に浸ってみたいかたにお勧めのヒストリカル・フィクションです。2006.6.12★★★★★

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