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2005.11.23

シリアス作家のトンデモ本

ロマンスを読んでいて思うのは、第二外国語にフランス語を選べば良かったなぁということだ。フランス語の出現頻度の高さときたら、マジでフラ語の辞書を買おうかと考えているほど。その昔、日本人にとってエイゴが洗練と現代性の象徴だったように、エイゴ圏の人々にとってフランス語はロマンチックに響くのだろう。
昔ほんのちょっと齧ったのはドイツ語だったのだけれど、こちらはフランス語に較べるとずっと出現頻度は低い。「イッヒ・フンバルト・デル・○○○」なーんていう下品な冗談が学生時代流行ったのを覚えているけれど、きっとロマンチックじゃないんだろうね。現在、鋭意読書中の「A Breath of Snow and Ashes」(今のところ、すごく、すごーく、良い!!)にはドイツ語が出てくるけれど、喋ってるのはヒーローではなくて、どちらかというとコミカルな役どころの叔母さん。イケメンFergusが喋るのはフランス語だし、ヒーローのJamie(マルチリンガル!)が良く使うのはゲール語だ。ゲール語もロマンスでは人気がある。別の意味でロマンチックなんだろうね。よくスコットランドものの表紙で何故か裸体にキルトだけまとった男子の絵が描いてあるけど、あーいうノリで。私には音すら想像できないので判断不可能だけれど(ゲール語も辞書欲しいかも・・・)。
とにもかくにも外国語ってのはロマンスにおいてはムード作りの大事な小道具だ。おっとこまえのヒーローに知らない国の言葉を耳元で囁かれたい訳である。きゃー。

とーこーろーが。
使い方を誤ると、ムードぶち壊しの最終兵器にもなりうる怖さを秘めている。
そう、「The Shadow and the Star」のコトです。

0380761319The Shadow and the Star
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英国とハワイを舞台にしたこのヒストリカル・ロマンスのヒーローSamuelは、子供時代に日本人執事(!)のDojunさんに日本語と日本の心と武道を教わったたという大変な日本かぶれ。「ご縁」にかけて五円玉をプレゼントたり(全然ロマンチックじゃない!)する。クライマックスには船の上で悪役と戦うシーンがあるんだけれど、相手を船べりから鮫の泳ぐ海に逆さづりにして、鮫の餌にしてやると脅す緊張感あふれる場面で、鮫に向かって叫んだ言葉が「Onaka ga sukimashita ka !」。大ずっこけである。腹がよじれるほど笑った。
こんな調子で、要所要所の大事なシーンで日本語や日本的小道具がてくるんだけれど、プチ可笑しい程度から上述の大爆笑レベルまで、とにかく徹底的に雰囲気を破壊してくれる。なにしろ笑える。たまに日本語間違ってて、「Jihi no kokoru(慈悲の心?)」とか言っちゃう。でも、本人は大真面目で己の「Shikijo(色情)」と戦うシリアスな男なのだ。
こんなトンデモ本を書いてしまうなんてどんな二流作家かと思われるかもしれないけれど、とんでもない。ローラ・キンセールは作品数こそ少ないものの、長いキャリアを誇る大人気作家で、最新作の「Shadowheart」では2005年のRITA賞にも選ばれている。私だって「Flowers from the Storm」にはノックアウトされたもの。華麗な文章で重くエモーショナルなロマンスを綴る超シリアス作家なのだ。そんな彼女がやってしまった訳である。
ところが、彼女が「やってしまって」いることは本国では認識されていないようで、この「The Shadow and the Star」だってニューヨーク・タイムズ・ベストセラーだし、RITA賞のファイナリストにも選ばれている。つい最近、日本デビューを大成功させたリサ・クレイパスもAll About Romanceにこの作品のレビューを寄せているけれど、ベタ褒めだ。
私たち日本人にだけ判る、この可笑しさ…。残念なような、ちょっと嬉しいような、複雑な気分。ずっと絶版状態でしたが、最近Reissueされて入手しやすくなりました。まず、永遠に邦訳が出ることはありえないと思うので、興味の沸いたひとは是非読んでみてください。笑えます。

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2005.11.08

Scent of Danger

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Andrea Kane

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大ヒット香水C'est Moiで市場を席巻した香水会社RuisseauのCEOであるCarsonが、休日出勤のオフィスで何者かに撃たれる。一命はとりとめたものの腎機能が停止し、腎移植が必要に。実はCarson、28年前に精子ドナーになったことがある。その時の精子から生まれた子供がいるかもしれない。血縁者なら腎移植のドナーになれる可能性大だ。Carsonが親同然にサポートし、成長して今はRuisseauの顧問弁護士になっているDylanはCarsonのために娘の居場所を突き止める。彼女の名前はSabrina。Carson譲りの頭脳で飛び級に飛び級を重ね、若干27歳で経営コンサルタント会社の代表というスーパーウーマンだ。DylanとSabrinaはたちまち恋に落ちるが、二人の所にもCarsonを狙った犯人の魔の手が伸びる。

ロマンチック・サスペンスは苦手とか言っておきながら、また読んじゃいました。
ロマンス:サスペンスが2:8ぐらいかな。ロマンスは殆どサブプロットのような扱いですね。それでも楽しく読めたのは、ひとえにヒロインSabrinaのキャラクターお陰。会社CEOの父親にトップ・デザイナーの母親、本人も27歳で会社経営なんていうド派手ぶり。真っ赤なスーツも着こなす美女で、「親しみやすさ」なんて全く無視した気持ちよいほどのスーパーウーマン設定。となると、とかく影があったり過去があったりするものだけれど、彼女に限ってはこれが全くの自然体。かえって嫌味がなくて好感度大でした。カッコよすぎるお姉さまです(年下だけどorz)。恋のお相手Dylanも生まれはともかく若くてハンサムな取締役弁護士。このいかにも頭の回転速そうな二人の粋な台詞のやり取りが作品の一番の魅力ですね。
サスペンスの方は、非常にテンポよく進むし、犯人最後まで分からなかったのに、最後の謎解きの部分では「なんでやねん」と突っこみを入れたくなるポイントがいくつか出てきたりしてちょっと拍子抜け。でも、本格ミステリ読んでるわけじゃないしね。とにかくゴージャスで、有り得ないほど濃厚な昼ドラ展開がとっても楽しかったです。2005.11.07★★★★

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